鈴木啓太建築設計事務所 blog

実家の耐震改修その１１（材料決め）

サッシの色決めのため、工務店さんで打合せをしてきました。

外からは濃い色がいいけど、中から見たら、え？ってことにならないように、壁紙からフローリング、枠材等内装材の一式サンプルを工務店さんにご用意頂き
あーだこーだと。


材料決めで大切な事

①使用環境に適合するものを選ぶ。

②実物を見ないで決めない。
写真と実物は絶対に違います。

③小さなサンプルでは決めない。
色や柄が正確に判断できません。

④使用環境に合わせて色を確認する。
屋外のものは当然なのですが、室内のものは使用するランプによって色が全然違って見えます。

⑤使用する材料をまとめて見る
単品では良くても、合わさると気になる色味を感じたりすることがあります。

初回は、カタログや小さなサンプルで候補をいくつかあげて、サンプルを取り寄せて最終決定という流れがスムーズだと思います。

実家の耐震改修その１０（地盤調査）

エコポイントの申請対象工事が７月３１日ということで、ばたばたと工事契約と着工準備。
金額も予算内になんとか納まり、期限内に無事着工しました。
エコポイントの駆け込み工事は、結構多かったみたいで、工務店さんもてんやわんやだったみたいです。

今日は、地盤調査の立会と不明部分の調査。

構造がある程度わかってきて、想像で書いていたものが、だいぶクリアになってきました。
現状、特に大きな問題も無く、一安心。
後は、北側の水廻りの構造材が無事であることを祈るのみ。

実家の耐震改修その９（無筋基礎を補強するか？）

基礎の最低基準が明確化されたのが、２０００年の基準法改正。金物関係も同じ年に明確化されています。
規定化されたホールダウン金物を無筋基礎につけてもあんまり効かないので、基礎も一緒に規定化されたのだと思います。
基準法で、基礎に配筋するな！とは書いていないので、２０００年以前の良心的な工務店や設計者が設計した建物には配筋がされているのではないかと思います。

実家はというと、３６歳なので、当然無筋基礎です。


耐震補強は上部構造の補強がメインで、基礎や地盤は補足的な扱いになっています。
何より大事なのは、上部構造をきちんとすること。これは間違いないです。これで、人命にかかわる倒壊は避ける事が出来ると思います。
でも、、基礎が無筋だと、建物の固定がきちんと出来なかったり、基礎が折れたりして、大きな地震を受けると以後改修のしようが無くなり住めなくなる可能性が高いです。
ただ、基礎を補強するとなるとお金がかなりかかります。

無筋基礎について、「木造住宅の耐震診断と補強方法」にどう書いてあるかというと
鉄筋コンクリート造布基礎に新たに打ち直す事が不可能な場合には、既存のコンクリート造布基礎に鉄筋コンクリート造の布基礎を抱き合わせることにより補強する。
とあります。
「鉄筋コンクリート造布基礎に新たに打ち直す」、建物を持ち上げたり、隣に移したりして、基礎を新設することを言っています。普通は不可能ですね。
ですので、一般的には、「既存のコンクリート造布基礎に鉄筋コンクリート造の布基礎を抱き合わせることにより補強する。」をします。

では、無筋基礎をそのまま使うという補強方法があるかというと、無い事は無いようです。

「木造住宅の耐震診断と補強方法」には、
局所的に強い壁を用いず、耐震要素をバランス良く配置する
とあります。

横浜市の「既存木造住宅の耐震改修工事・施工マニュアル」には
柱脚部分にホールダウン金物15ｋＮ以上を要する程度の引抜力がかかるなどの場合には基礎補強が必要です（ただし10ｋＮ用ホールダウンコーナーの短期許容引張耐力以下の引抜力の場合はツイン基礎の必要はありません）。
とあります。

以上の二つによる上部構造の補強を行うには、どうすればいいかと考えてみますと、
普通の木造住宅は、隅に耐力壁がありますので、それをまともな耐力壁に改修するのが、誰でも考える事ですが、そうすると２階建ての隅柱の引き抜きは15ｋＮを超えてしまので、ＮＧになります。
じゃあどこを補強すればということになると、今ある窓を潰して行く事になります。

これは、ちょっと気の毒だということで、
無筋基礎を検証をした記事が日経ホームビルダー2010年２月号に出ていました。
無筋基礎の引き抜き強度の試験結果は予想以上に強かったのを受けて、
設計や工務店の現場サイドは、30ｋＮ程度の引き抜き強度は見込めるに対し、
坂本功先生は10ｋＮ、建築研究所は推測できない。と。
国の基準は、後者が決めるので、結局のところ基礎の補強は必要ということで、変わらず。
まあ、当たり前の結果ですけど。

結局のところ、先生たちは基礎の補強はするものだよ、その点、よ～く施主に説明してねと、やっかい事は現場に押しつける。そもそも元の基準はだれが作ったんだと言いたい。
設計者や工務店は、お金を極力かけずに、補助金の範囲で耐震補強をしたいという施主の気持ちをくむと、基礎の補強は必要と知りつつ、最低限の上部補強の提案しかできない状況。
余談ですが、横浜市は、マニュアルで基礎の補強を明記しているだけあって、期限がありますが補強工事に225万円の補助金がでます。これなら基礎の補強もできそうです。
横浜市は、津波の被害予想の見直しも１番だし、横浜市の人が羨ましいです。中古の住宅を買って、耐震改修リフォームしたい人等は、今は、横浜がおすすめです。
マニュアルもすごくしっかりしていますので、安心だと思います。

さて、実家はというと、かなり大がかりなリフォーム工事ですので、他の工事は少しだけ我慢してもらって、基礎の補強をすることにしました。
素敵な家になっても、地震が来て住めなくなっては、意味がないので。

ただ、両親とはいえ、説明するのが本当に大変でした。
国には、もう少し、現場サイドに配慮した、わかりやすい補強方法の作成をお願いしたい。

実家の耐震改修その８（全部Low-eでいいのかな？）

最近のエコエコブームで、Low-eガラスの普及が進んでいます。
サッシ屋さんやガラス屋さんのショールームに行くと、放熱ランプの実感コーナーがあって、
ほら熱くないでしょ？という売り文句。
夏の暑い日だったりすると、すごーいということに。
Low-eガラスは、物によって違いますが、日射熱を半分くらいに抑えてくれます。
でも、冬のお日様のほかほか体感コーナーをつくったりすると、どうでしょう？
今まで、窓際で日向ぼっこしていた気持ちよさが、半分・・・。
なんだか寂しい感じもします。

実家は耐震改修に合わせて断熱改修もします。
実家は西側道路で、西側は植木畑で日射を遮るものがありませんので、
当初から日射対策で、西側には小さな窓が一つだけ。
南側は、大きな軒とバルコニーと、夏の日射を防ぐつくりで、大きな窓があります。
冬はとても寒いので、日向ぼっこできる窓際は家族のお気に入りの場所でした。
今回の改修でも、それが無くなるのは、ちょっと寂しいのでいろいろと検証してみることに。

普通の複層ガラスとＬｏｗ-eガラスを使ったサッシは断熱性能も異なります。
アルミ樹脂複合サッシ+Ｌｏｗ-eガラス（空気層12）　2.33Ｗ/（㎡・Ｋ）
アルミ樹脂複合サッシ+複層ガラス（空気層12）　3.49Ｗ/（㎡・Ｋ）

これで、ＱＰＥＸを使って検証してみます。
①全部Ｌｏｗ－ｅガラス　熱損失係数Ｑ＝2.43Ｗ/㎡Ｋ、消費燃料　782Ｌ
②南面複層で他Ｌｏｗ－ｅガラス　熱損失係数Ｑ＝2.67Ｗ/㎡Ｋ、消費燃料　774Ｌ
※消費燃料はシステム効率76％のＦＦストーブで算出

断熱性能は、劣りますが、日射利用をしている分だけ、消費燃料が少なくなりました！
となればいいのですが、実は違います。
ＱＰＥＸは、近隣建物の影の影響を考慮出来ないので、算出されるのは、
お日様サンサンの 周りに建物が無い状態のものになります。
ですので、影を考慮すると、たぶん①の方が燃費は良いかもしれないです。

自立循環型住宅へのガイドラインで日射利用の規定があります。
冬至日で８時～１７時の間の９時間で
立地１　３時間
立地２　５時間
立地３　終日
という区分があり
神奈川県ですと、立地２と立地３が検討の余地があるということになっています。

上図は、実家の冬至の８時～１７時の南壁面の隣地建物の日影図です。

立地２の日照時間５時間をクリアするには、一階の窓の影が４時間以内である必要があります。
実家の場合、４時間の影が１階の天井くらいに来ているので、
自立循環型住宅へのガイドライン的には、日照利用の計算に乗ってこないということになります。
実家は前面空地（庭）が５．５ｍで南のお隣さんは１ｍ離れて建っています。
距離は６．５ｍ、自立循環型住宅へのガイドラインの計算ラインにのせるには、離隔は９ｍくらい必要。
普通の家だとなかなか難しいですね。
そもそも、離隔は取れても、蓄熱の検討も残っています。蓄熱は普通の木造だとなかなか難しいです。

じゃあ、日射も入れずに、高気密高断熱+高遮熱で、内に籠るのが最善かというと、
私はそうではないと思っています。
エコで経済的かもしれないですが、気持ち良くないのではと。


下図は、実家の立春の８時～１７時の南壁面の隣地建物の日影図です。
１階にかなり光が入ることが分かります。
２月４日頃ってまだまだ寒いですよね。
改修後も両親には、日向ぼっこを楽しんでもらいたいです。


日向ぼっこ気持ちいいですよね。


エコエコの前に、少し考えてみて下さい。

実家の耐震改修 その７（ＱＰＥＸによる現状の断熱性能）

熱損失係数を算定するソフトにＱＰＥＸというものがあります。
室蘭工業大学鎌田研究室で開発され、新木造住宅技術研究協議会というところで普及販売されています。
価格は５０００円ととてもリーズナブル。
この手の計算ソフトは、十万円単位のものが多いので破格の安さです。
省エネ住宅を本当に普及させたい！という意気込みが伝わってきます。
エコというつつ、実はお金儲けという事が実に多い世にあって
ここが取り組んでいることは、とても尊敬できます。


実家の今の断熱性能について、検証してみます。
といいつつ、既存の断熱材の実性能が不明であったり、劣化があったり、気密も無いと思いますので、
実際の結果は、実情よりも良くなっていると思います。
計算では、壁のＧＷをGW10Kとして厚さ50mm、気密はありとしています。

■実家の断熱性能の計算結果
熱損失係数　5.78Ｗ/㎡・Ｋ
暖房用エネルギー消費量　68,626ＭＪ（19,063kWh）
１㎡あたりの暖房用エネルギー消費量　635ＭＪ/㎡（176kWh/㎡）

かなり乱暴ですが、統計の暖房と冷房の比率から、年間冷暖房負荷を算定してみます。
だいたい暖房１０に対し、冷房１ですので、176kWh/㎡×1.1＝193.6kWh/㎡
実家の耐震改修　その６に記載した、等級に当てはめると、等級２という結果。
年間冷暖房負荷的には、なかなか高性能です。
では、熱損失係数の5.78Ｗ/㎡・Ｋはというと、等級２の5.2Ｗ/㎡・Ｋを下回ります。

年間冷暖房負荷は、総熱損失係数で算定されます。
総熱損失係数は、床面積×熱損失係数で算出します。
なので、小さいお家ほど、年間冷暖房負荷は小さくなります。
小さく暮らす事は、実はすごくエコな事なんです。

暖房用エネルギー消費量　68,626ＭＪという数字、わけがわからないと思いますが、
76％効率の暖房器で灯油換算で2,438Ｌとなります。
灯油のポリタンクは一般的には１８Ｌですので、2438Ｌ/18Ｌ＝135個。
そんなはずは、なさそうです。

自立循環型住宅へのガイドラインで、東京の一般住宅の年間一次エネルギーの消費量が表で出います。
表を読むと７２ＧＪくらい。
この中の２０％くらいが、暖房用ですので、72ＧＪ×0.2＝14.4ＧＪが暖房用の一次エネルギー。
灯油を一次エネルギー換算すると、灯油１Ｌ＝37ＭＪですので、
14400ＭＪ/37ＭＪ＝389となるので、灯油の１８Ｌポリタンク21個分となります。
なんとなく現実的な数値。

では、実際に実家を次世代省エネ基準の熱損失係数の性能に改修するとどうなるかというと、
同様に76％効率の暖房器での灯油換算は786Ｌとなります。

なかなか面白い結果です。

検証してみて分かった事。
一般的な家はエコじゃないと言われるけれども、実生活はエコだということ。
次世代省エネ基準に改修しても、恐らく光熱費はそんなに変わらないということ。（同じ我慢をすると格段に下がります）
でも、同じ光熱費で、ぐっと快適になりそうですね。
灯油の１８Ｌポリタンク114個分我慢してたんですから。
もちろん、高効率機器を使えば、ぐっと光熱費は下がります。

さて、試算してみて思うに、次世代省エネ基準の普及でＣＯ２削減、うまくいくのだろうか？
快適さを求めるのは、人間の本能で、それがあるから今の世の中があると思います。
人は経済の許容範囲で活動しますので、消費されるエネルギーは結局同じということに。
基準をつくるのであれば、もう少し上を目指さないと、ＣＯ２は減らない気がしなくもないです。

※数値に誤りがありましたので訂正しました。