2011年 07月 26日
実家の耐震改修その9(無筋基礎を補強するか?)
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基礎の最低基準が明確化されたのが、2000年の基準法改正。金物関係も同じ年に明確化されています。
規定化されたホールダウン金物を無筋基礎につけてもあんまり効かないので、基礎も一緒に規定化されたのだと思います。
基準法で、基礎に配筋するな!とは書いていないので、2000年以前の良心的な工務店や設計者が設計した建物には配筋がされているのではないかと思います。
実家はというと、36歳なので、当然無筋基礎です。
耐震補強は上部構造の補強がメインで、基礎や地盤は補足的な扱いになっています。
何より大事なのは、上部構造をきちんとすること。これは間違いないです。これで、人命にかかわる倒壊は避ける事が出来ると思います。
でも、、基礎が無筋だと、建物の固定がきちんと出来なかったり、基礎が折れたりして、大きな地震を受けると以後改修のしようが無くなり住めなくなる可能性が高いです。
ただ、基礎を補強するとなるとお金がかなりかかります。
無筋基礎について、「木造住宅の耐震診断と補強方法」にどう書いてあるかというと
鉄筋コンクリート造布基礎に新たに打ち直す事が不可能な場合には、既存のコンクリート造布基礎に鉄筋コンクリート造の布基礎を抱き合わせることにより補強する。
とあります。
「鉄筋コンクリート造布基礎に新たに打ち直す」、建物を持ち上げたり、隣に移したりして、基礎を新設することを言っています。普通は不可能ですね。
ですので、一般的には、「既存のコンクリート造布基礎に鉄筋コンクリート造の布基礎を抱き合わせることにより補強する。」をします。
では、無筋基礎をそのまま使うという補強方法があるかというと、無い事は無いようです。
「木造住宅の耐震診断と補強方法」には、
局所的に強い壁を用いず、耐震要素をバランス良く配置する
とあります。
横浜市の「既存木造住宅の耐震改修工事・施工マニュアル」には
柱脚部分にホールダウン金物15kN以上を要する程度の引抜力がかかるなどの場合には基礎補強が必要です(ただし10kN用ホールダウンコーナーの短期許容引張耐力以下の引抜力の場合はツイン基礎の必要はありません)。
とあります。
以上の二つによる上部構造の補強を行うには、どうすればいいかと考えてみますと、
普通の木造住宅は、隅に耐力壁がありますので、それをまともな耐力壁に改修するのが、誰でも考える事ですが、そうすると2階建ての隅柱の引き抜きは15kNを超えてしまので、NGになります。
じゃあどこを補強すればということになると、今ある窓を潰して行く事になります。
これは、ちょっと気の毒だということで、
無筋基礎を検証をした記事が日経ホームビルダー2010年2月号に出ていました。
無筋基礎の引き抜き強度の試験結果は予想以上に強かったのを受けて、
設計や工務店の現場サイドは、30kN程度の引き抜き強度は見込めるに対し、
坂本功先生は10kN、建築研究所は推測できない。と。
国の基準は、後者が決めるので、結局のところ基礎の補強は必要ということで、変わらず。
まあ、当たり前の結果ですけど。
結局のところ、先生たちは基礎の補強はするものだよ、その点、よ~く施主に説明してねと、やっかい事は現場に押しつける。そもそも元の基準はだれが作ったんだと言いたい。
設計者や工務店は、お金を極力かけずに、補助金の範囲で耐震補強をしたいという施主の気持ちをくむと、基礎の補強は必要と知りつつ、最低限の上部補強の提案しかできない状況。
余談ですが、横浜市は、マニュアルで基礎の補強を明記しているだけあって、期限がありますが補強工事に225万円の補助金がでます。これなら基礎の補強もできそうです。
横浜市は、津波の被害予想の見直しも1番だし、横浜市の人が羨ましいです。中古の住宅を買って、耐震改修リフォームしたい人等は、今は、横浜がおすすめです。
マニュアルもすごくしっかりしていますので、安心だと思います。
さて、実家はというと、かなり大がかりなリフォーム工事ですので、他の工事は少しだけ我慢してもらって、基礎の補強をすることにしました。
素敵な家になっても、地震が来て住めなくなっては、意味がないので。
ただ、両親とはいえ、説明するのが本当に大変でした。
国には、もう少し、現場サイドに配慮した、わかりやすい補強方法の作成をお願いしたい。
by suzuki-ar
| 2011-07-26 13:58
| 建築:住宅耐震・断熱改修